仮差押の申立て方法 1 / 申立て手続き・管轄

1.手続きの流れ

一般的な仮差押えの流れは、次のようになります。

申立て ⇒ 書面審理または債権者面接 ⇒ 担保決定(担保金の供託、立担保証明提出) ⇒ 保全決定(保全命令発令)


2.申立のタイミング

既にご説明したように、仮差押えとは、訴訟で勝った場合の権利の実現を保全するため、あらかじめ相手の財産を仮に差し押さえておくというものです。ですから、原則に従った通常の流れは、次のようになります。

仮差押 ⇒ 訴訟 ⇒ 勝訴判決 ⇒ 本差押(強制執行)

このように、仮差押えは訴訟をすることを前提に行うものですから、仮差押えをしたら、次は訴訟を提起することになります。

まず、保全手続き(仮差押)を先に行い、時期を見計らって訴訟の申立てをします。裁判所からは、「いつまでに訴訟を申し立ててください」というような連絡はありません。訴訟を申し立てる時期は自分で判断します。この場合、いつまでに訴訟を起こさなければならないという期限はありませんが、仮差押に引き続き、なるべく早く行うというのが普通でしょう。

なお、仮差押を受けた債務者の側としては、判決で確定もしていないのに自分の財産が差し押さえられているわけですから、この不都合を裁判で早く解消するため、相手方に対して一定の期間内に本案訴訟を提起するよう、裁判所に申し立てることができます(起訴命令の申立)。

債務者が起訴命令の申立をした場合には、仮差押をした債権者は、一定の期間内に訴訟を提起しなければなりません。(一定の期間内に本案訴訟を提起しない場合は、保全命令(仮差押)は取り消されます。なお、保全命令が取り消されても担保の取戻しの問題は残ります。)

ところで、実は、必ずこの順番で仮差押を行わなければならないというわけではありません。仮差押と訴訟を同時に行うこともできますし、訴訟提起後に仮差押を行うこともできます。また、仮差押をした後で訴訟をしないこともできます。(仮差押がなされたことにより、あわてて相手方が支払いをし、訴訟に至らないで終了する場合もある。)

仮差押+訴訟 ⇒ 勝訴判決 ⇒ 本差押
訴訟 ⇒ 仮差押 ⇒ 勝訴判決 ⇒ 本差押
仮差押 ⇒ (支払いあり) ⇒ 訴訟中止(仮差押の取下)

なぜ、このようなことが可能かと言うと、保全手続き(仮差押)と裁判手続き(訴訟)は別の制度だからです。裁判所の中でも担当部署が違います。また、仮差押をする際に、事前に訴訟を起こすという約束をすることもありませんので、例えば、やろうと思えば、仮差押の後に支払督促や調停をやることも可能なのです。(支払督促や調停をする前に仮差押をするというのは本来ありません。)

ただ、仮差押をどういう目的で、どういう順番で行うにしろ、いずれの場合も担保の取戻し手続きがあり、状況によっては担保の取戻しが困難になる場合がありますので、安易に仮差押をするのは禁物です。

仮差押は仮差押、担保は担保で、こちらの場合もそれぞれ別の手続きになり、仮差押が成功しようが失敗しようが、担保の取戻しは決まった手続きに従わなければならないのです。


参考
仮差押えと訴訟の申立書は、時期を開けて別々に提出する。
※仮差押えと訴訟の申立書を両方提出しても、訴訟の時期まで裁判所は預かってくれない。なお、仮差押えと訴訟の申立てを裁判所で同時に受け付けることもできるが、仮差押えと訴訟の訴状が同じぐらいのタイミングで相手方に送達されるので、仮差押えの意味がなくなってしまう。そこで、訴訟の申立ては、時期を見て後から自分で申し立てる。



3.面接(審尋)

仮差押の審理については、申立書及び疎明資料による書面審理で行われるか、または、債権者と裁判官との面接(審尋)によって行われます。東京などでは、原則として全件について債権者面接が行われているようです。なお、仮差押の場合は、極まれなケースを除き、債務者への審尋や口頭弁論は行われません。(仮差押えは債務者に秘密にして行うものだからです。)


4.担保(保証金・供託金)

仮差押では、一部担保のない事案もありますが、そういう例外を除き、ほとんど全てのケースで担保は立てられるようです。担保の額は、色々な事情を考慮され、事案によって異なりますが、債権額の1割〜3割程度のようです。


5.管轄

仮差押の管轄は、「本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所」になります。細部については、下記条文をご参照ください。


参考】 <民事保全法>

保全命令事件の管轄
第11条 保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができる。

第12条 保全命令事件は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
 2 本案の訴えが民事訴訟法第六条第一項 に規定する特許権等に関する訴えである場合には、保全命令事件は、前項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所が管轄する。ただし、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が同条第一項 各号に定める裁判所であるときは、その裁判所もこれを管轄する。
 3 本案の管轄裁判所は、第一審裁判所とする。ただし、本案が控訴審に係属するときは、控訴裁判所とする。
 4 仮に差し押さえるべき物又は係争物が債権(民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百四十三条 に規定する債権をいう。以下この条において同じ。)であるときは、その債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶(同法第百十二条 に規定する船舶をいう。以下同じ。)又は動産(同法第百二十二条 に規定する動産をいう。以下同じ。)の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。
 5 前項本文の規定は、仮に差し押さえるべき物又は係争物が民事執行法第百六十七条第一項 に規定する財産権(以下「その他の財産権」という。)で第三債務者又はこれに準ずる者があるものである場合(次項に規定する場合を除く。)について準用する。
 6 仮に差し押さえるべき物又は係争物がその他の財産権で権利の移転について登記又は登録を要するものであるときは、その財産権は、その登記又は登録の地にあるものとする。



私の場合は、預金口座(債権)の仮差押えであり、私の住所(義務履行地)は神奈川県小田原市、債務者の所在地は埼玉県越谷市、預金口座(第三債務者)の所在地は東京都中央区日本橋なので、本案の管轄裁判所としては、小田原簡易裁判所または越谷簡易裁判所が管轄になり、物若しくは係争物の所在地(民事保全法12条4項)を管轄する地方裁判所としては、東京地方裁判所が管轄になります。裁判所の管轄

私は、小田原簡易裁判所に少額訴訟を提起する予定でいましたので、そこが本案の管轄裁判所ということになりますから、仮差押も小田原簡易裁判所に申立てを行いました。なお、その際に、少額訴訟を提起するとか通常訴訟を提起するとか、そういう約束はもちろんありません。ただ、少額訴訟を提起する前提で進めていることは、裁判所の書記官に相談してありましたので、なるべく早く本案訴訟を申し立てるようにとは言われました。

なお、担保(供託金)については、私の場合、債権額が17,220円とあまりに少額なため、書記官から「もしかしたら担保がないかもしれない」と言われましたが、結局、1万円の担保が決定されました。また、裁判官との面接は、ありませんでした。


 仮差押の申立て方法 2 / 必要書類・作成方法







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